造船テーマ株とは何か?
造船とは、文字通り船舶の製造や修理、関連機器などを手掛ける企業の株式のことです。 投資の世界では、特定の社会情勢や技術革新などを背景に、将来的な成長が期待される業界や分野を「テーマ」として捉え、その関連企業に投資することがあります。造船もその一つで、国際的な物流や安全保障の観点から注目されることが多いテーマです。

造船ビジネスの仕組みや工程、商流について見ていきましょう。
造船ビジネスの仕組み
造船ビジネスは、受注生産が基本です。顧客である海運会社や船主から「こんな船がほしい」という具体的な要望(仕様)を受けて、初めて建造がスタートします。
- 顧客からの発注
海運会社などが、輸送する貨物や航路に合わせて、積載量や速力、燃料の種類などを指定して造船会社に発注します。近年では、環境規制に対応した次世代船(LNG、アンモニア、水素などを燃料とする船)の発注が増加しています。
- 設計
発注内容に基づき、船の基本設計から詳細な製造図面までを作成します。この段階で、安全性や効率性、コストなどが決定されます。
- 建造
設計図に従って、実際の船を建造します。後述する「ブロック建造方式」が一般的です。
- 引き渡しとアフターサービス
完成した船を顧客に引き渡した後も、修理やメンテナンス、部品供給などのアフターサービスを提供します。このアフターサービス事業が、造船会社の安定した収益源となることもあります。
多くの造船会社は、新造船の建造だけでなく、既存船の修繕や、軍艦・特殊船の建造など、事業を多角化することで経営を安定させています。
造船工程の詳細
造船は、巨大な船を効率的に建造するため、いくつかの工程に分かれています。
- 加工
鋼板を設計図に合わせて切断・曲げ加工します。最新の造船所では、コンピュータ制御されたロボットがこの作業を担うこともあります。
- ブロック建造
船体をいきなり一から作るのではなく、数十〜数百トンの巨大な「ブロック」と呼ばれるパーツに分割して製作します。この段階で、ブロック内部の配管や機器の一部を取り付けておく「先行艤装」を行うことで、後の作業効率を大幅に向上させます。
- 搭載・溶接
完成したブロックをドックや船台に運び込み、巨大なクレーンで吊り上げて船の形になるように組み立てていきます。この工程で、ブロック同士を溶接し、一つの船体として完成させます。
- 艤装(ぎそう)
船体が完成した後、エンジンや発電機、航海計器、居住スペースの内装など、船として機能するための様々な設備を取り付けていきます。
- 試運転・引き渡し
船が完成すると、海上での試運転を行い、性能や安全性を最終確認します。問題がなければ顧客に引き渡されます。
船舶の商流(商取引の流れ)
「商流」とは、商品の所有権や金銭がどのように移動するかを示す商取引の流れのことです。造船における商流はシンプルに、船主(海運会社など)が造船所に船を発注し、代金を支払い、完成した船を受け取るという流れになります。
しかし、この背後には多くの関係者が関わっています。
- 造船所
船を建造する中心的なプレイヤーです。
- 船主/海運会社
船を発注し、所有・運航する顧客です。
- 舶用機器メーカー
エンジン、スクリュー、発電機、航海システム、ポンプなど、船舶に必要な機器や部品を造船所に供給します。
- 金融機関
船の建造費用は非常に高額なため、船主や造船所への融資を行います。
- 商社
複数の関係者間の調整役を担ったり、資金調達をサポートしたりすることがあります。
これらの関係者が協力し合うことで、一つの船が完成し、世界の海へと送り出されていくのです。
なぜ今、造船が熱いテーマなのか?
造船テーマ株が注目される背景には、いくつかの要因があります。
- 世界的なサプライチェーンの見直し
コロナ禍を経て、多くの国が自国での生産や物流の確保を重要視するようになりました。これにより、海上輸送の安定化がより強く求められています。
- 脱炭素化の動き
国際海事機関(IMO)による排出ガス規制の強化を受け、環境負荷の低い次世代船(LNG船、水素船、アンモニア船など)へのシフトが進んでいます。これは、既存の船の代替需要を生み出すだけでなく、新たな技術開発競争を促し、造船業界全体の活性化につながっています。
- 安全保障の強化
地政学的なリスクの高まりから、各国の海軍力強化の動きが見られます。これにより、軍艦や巡視船などの需要が増加しています。
造船が解決できる社会課題
造船は、以下のような社会課題の解決に貢献しています。
- 物流の安定化
世界の貿易量の大部分は海上輸送によって支えられています。安定した船舶供給は、物資の安定供給に不可欠です。
- 環境問題
次世代船の開発・普及を通じて、船舶からの温室効果ガス排出量削減に貢献し、地球温暖化対策に寄与します。
- 国際的な安全保障
軍艦や巡視船の建造は、各国の領海保全や海上交通の安全確保に役立ちます。
テーマの恩恵
- 造船会社
新規受注の増加、特に高付加価値な次世代船の受注により、売上と利益の向上が期待できます。
- 関連機器メーカー
船舶のエンジンや航海システム、排ガス処理装置などを提供する企業も、造船業界の活況に伴い恩恵を受けます。
- 投資家
造船業界全体の成長や、特定の企業の業績向上に伴い、株価上昇や配当増などの形で利益を得る可能性があります。
現在の市場規模と今後の見込み
市場規模:
世界の造船市場は、調査機関によって推定値に差はあるものの、2024年時点で 年間約1,500億〜1,960億ドル(約21兆〜27兆円)規模とされています。商船や軍艦、LNG船などの大型案件が新規に受注されると、市場規模はさらに拡大します。特に中国、韓国、日本の3カ国で世界の大半を占めており、中国は近年シェアを急速に伸ばしています。
今後のCAGR:
環境規制の強化や地政学的リスク、新興国経済の拡大、そしてLNG燃料船や次世代省エネ船などへの需要増加を背景に、堅調な成長が予測されています。多くの市場調査レポートでは、今後数年間で年平均成長率(CAGR)が3〜6%程度とされており、2030年前後には2,000億ドルを超える市場規模に達する見通しです。
関連株を考える際のポイント
造船テーマ株に投資を検討する際は、以下の点に注目してみましょう。
- 受注残高
企業の公式サイトやIR情報で受注残高を確認しましょう。これは将来の売上を予測する重要な指標です。
- 得意分野
LNG船、コンテナ船、タンカー、軍艦など、企業ごとに得意とする船種が異なります。各企業の強みを理解することが大切です。
- 技術力
脱炭素化の流れの中で、次世代船の開発競争が激化しています。水素、アンモニア、メタノールなどを燃料とする船や、自動運航船などの技術力を持つ企業は、将来性が高いと評価できます。
- 海外比率
世界の造船市場は国際競争が激しいため、海外での競争力や受注状況も重要なポイントです。
まとめ
造船は、世界経済や国際情勢に密接に関わる非常にダイナミックなテーマです。単なる船を作るだけでなく、脱炭素化という大きな流れの中で、イノベーションが求められる分野でもあります。 投資初心者の方は、まずこの記事を参考に、関心のある企業のIR情報やニュースをチェックすることから始めてみてください。未来の成長を担う造船業界に注目し、あなたのポートフォリオに加えてみるのはいかがでしょうか?💡
その他
テーマ株の説明
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投資実績について
確定利益である配当・分配金も2024年はおかげさまで709万円となり
2024年末の資産増(前年対比):+1,386万円(+48%)となりました。
\毎月の投資収益(2024年)/

\総資産(2024年末)/

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