📊 CAPEレシオ(シラーPER)って何?その使い方と注意点

株:基礎知識

投資の世界には、企業の価値を測るための様々な指標があります。その中でも特に、株式市場全体の「割安感」や「割高感」を判断するために、世界中のプロの投資家が注目している強力なツールがあります。それが「CAPEレシオ」です。

一見難しそうな名前ですが、その考え方は非常にシンプルで強力です。この記事では、CAPEレシオの基本から、どのように使えば良いかまで、わかりやすく解説します。


💡 1. CAPEレシオとは?:景気の波をならして見る「かしこいPER」

CAPEレシオは、「Cyclically Adjusted Price–Earnings Ratio」の略で、日本語では「景気循環調整済み株価収益率」と訳されます。別名「シラーPER」とも呼ばれます。

🌟 通常のPERとの違い

私たちがよく目にする「PER(株価収益率)」は、現在の株価直近1年間一株当たり利益(EPS)で割って計算します。

通常のPERの計算式:
PER = 株価 ÷ 一株当たり利益(EPS)

これは非常に便利ですが、一つだけ大きな弱点があります。それは、企業の利益は景気の波によって大きく変動するという点です。景気が良い年は利益が膨らみ、PERが低く見えがちですが、景気が悪い年は利益が減り、PERが高く見えがちです。

🌟 CAPEレシオの「景気循環調整」とは?

CAPEレシオの画期的な点は、この景気の波による利益のブレを解消するために、以下の計算を用いることです。

  1. 直近10年間一株当たり利益(EPS)の平均値を使う。
  2. この10年間の利益を、インフレの影響を考慮して現在の価値に調整する。

CAPEレシオの計算式:
CAPEレシオ = 現在の株価 ÷ インフレ調整済み10年平均EPS

💡 ポイント: 「10年間の平均利益」を使うことで、一時的な景気の良し悪しに惑わされることなく、その企業の(あるいは市場全体の)「真の稼ぐ力」に対して、株価が現在どれくらいの水準にあるかを見ることができるのです。


🔎 2. CAPEレシオの「見方」:市場の温度計として使う

CAPEレシオは、主に「株式市場全体」の割安・割高を判断するために使われます。(S&P 500などの株価指数で算出されることが多いです。)

📈 CAPEレシオの数値が意味すること

CAPEレシオの数値市場の評価投資家への示唆
低い (例:10〜15程度)割安である可能性が高い絶好の買い場かもしれない
平均的 (歴史的に20前後)適正な水準である平均的なリターンが期待できる
高い (例:30以上)割高である可能性が高いバブルに近づいているかもしれない

歴史的に見ると、CAPEレシオが非常に低い時期に投資を始めた人は、その後高いリターンを得ています。逆に、CAPEレシオが非常に高い時期に投資を始めた人は、その後のリターンが低くなる傾向があります。

🚨 注意点:絶対的な指標ではない

CAPEレシオは強力なツールですが、一つ注意が必要です。

  • 「高いから必ず暴落する」というわけではありません。テクノロジーの進化や市場構造の変化によって、適正な水準そのものが上がっている可能性も指摘されています。
     
  • あくまで「過去の歴史との比較」に基づく指標であり、未来を完全に保証するものではありません。

🎯 3. 投資初心者はどう活用すべき?

では、私たちはこのCAPEレシオを日々の投資にどう活かせば良いでしょうか。

✅ 活用法1:現状認識の確認

毎月の積立投資をしている方も、投資を始める前の人も、CAPEレシオの数値を見て、「現在の市場の熱狂度」を理解するのに役立ちます。

  • もし数値が非常に高いなら…
    • 「今はバブル気味かもしれない。過度なリスクは取らず、積立ペースを維持しよう」
    • 「暴落に備えて、キャッシュポジション(現金)を少し厚めに持っておこう」
  • もし数値が非常に低いなら…
    • 「歴史的な安値圏だ。勇気を出して、少し多めに投資を検討しても良いかもしれない」

✅ 活用法2:長期・分散投資の重要性を再認識

この指標が教えてくれる最も重要なことは、市場は景気循環を繰り返すということです。

感情に流されて「今がチャンスだ!」と全財産を投資したり、「もうダメだ!」とすべて売却したりするのではなく、長期的な視点で、毎月一定額を積み立てる(ドルコスト平均法)という冷静な戦略こそが、景気の波を乗りこなすための最善策であることを思い出させてくれます。


📝 まとめ

CAPEレシオの要点詳細
名称景気循環調整済み株価収益率(シラーPER)
目的景気の波をならして、市場全体の「真の割安・割高」を判断する
計算株価を「インフレ調整済み10年平均利益」で割る
活用法市場の「熱狂度・冷静度」の確認、長期的な投資スタンスの維持

CAPEレシオは、ノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー教授によって有名になった、非常に信頼性の高い指標です。ぜひ、これをあなたの投資の羅針盤の一つとして活用してみてください。感情ではなく、データに基づいて冷静に市場と向き合うことが、成功への第一歩です。

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