水ビジネスとは何か?
「水ビジネス」は非常に広範なテーマであり、単に「水を売る」ことだけではありません。以下に、その具体的な事業内容と、特に日本の水ビジネスの海外展開について深掘りして解説します。

水ビジネスの具体的な事業内容
水ビジネスは、大きく分けて以下の領域に分類されます。
- 水供給・処理
- 上水道事業
家庭や工場に安全な水を供給するための浄水場や配管網の運営、維持管理。
- 下水道事業
家庭や事業所から排出される汚水を処理し、安全な水に戻すための下水処理場の運営、維持管理。
- 工業用水・農業用水
特定の産業や農業に必要な、特殊な水質の水を供給する事業。
- 造水(淡水化)
海水や塩分濃度の高い水を、飲める水や工業用水に変換する技術(海水淡水化プラントなど)。
- 上水道事業
- プラント・機器・素材
- プラント建設
上記のような浄水場や下水処理場、海水淡水化プラントなどの大規模施設の設計・建設。
- 機器・素材の供給
水処理に必要なポンプ、ろ過装置、水処理膜、化学薬品などの製造・販売。特に、日本の企業は水処理膜などの高度な素材技術に強みを持っています。
- プラント建設
- 運営・サービス
- 施設の維持管理・運営(O&M)
建設された施設の日常的な運転監視、保守点検、水質分析などを行うサービス。
- 水道事業のコンサルティング
水道事業の計画策定、運営改善、料金システム開発などのコンサルティング業務。
- 水質モニタリング
水源や処理水の水質を継続的に監視するシステムやサービスの提供。
- 施設の維持管理・運営(O&M)
日本の水ビジネスの海外展開(輸出)
日本の水ビジネスは、その高い技術力と安定的な事業運営ノウハウを活かし、積極的に海外展開を進めています。
海外進出の主な形態
- プラントの輸出・建設
上下水処理場や海水淡水化プラントといった大規模なインフラ設備を、新興国や水不足に悩む国へ輸出・建設する事業。これは日本の重工業やエンジニアリング会社が得意とする分野です。
- 素材・機器の輸出
高性能な水処理膜やポンプ、浄化装置など、日本の優れた製品を海外に輸出する形態。特に、水処理膜は日本の高い技術力が世界的に評価されています。
- 事業運営への参画
施設の建設だけでなく、その後の運営や維持管理にも参画する形態。現地企業との合弁事業や、既存の水道事業会社への出資を通じて、日本の運営ノウハウを提供します。
- 官民連携(PPP)
日本の自治体(東京都や北九州市など)が培ってきた上下水道事業のノウハウと、民間企業の技術・資金力を組み合わせて、海外の水道事業を支援する取り組みも進められています。
海外展開の課題
日本の水ビジネスが海外でさらに成長するためには、いくつかの課題も存在します。
- 国際的な競争激化
フランスのヴェオリアやスエズといった「水メジャー」と呼ばれる巨大企業が市場を先行しており、競争は激しいです。また、近年は中国などの新興国の企業も台頭してきています。
- 価格競争
日本の高度な技術は評価される一方で、価格面では新興国の企業に劣る場合があります。
- 人材不足
海外での事業運営には、現地の事情に精通した人材の育成が不可欠です。
これらの課題に対し、日本企業は単なる「モノ売り」ではなく、プラント建設から運営、維持管理までを一貫して提供する「総合ソリューション」として価値を提案することで、国際競争力を高めようとしています。また、M&Aや海外企業との連携も積極的に行われています。
なぜ今、水ビジネスが熱いテーマなのか?
水ビジネスが注目される背景には、世界的に深刻化する水不足という根本的な課題があります。安全で安定的な水の供給と効率的な利用は、生活の利便性にとどまらず、食料生産、経済活動、さらには人々の生命や健康に直結する喫緊のテーマです。
淡水の量
地球上に存在する水の総量のうち、淡水の割合はわずか約2.5%です。
この限られた淡水のほとんどは、私たちが直接利用できる状態にはありません。淡水の内訳は以下の通りです。
- 氷河と氷雪
淡水全体の約70%は、南極、北極、高山の氷河や氷雪として存在しています。これらは凍結しているため、すぐには利用できません。
- 地下水
残りの約30%のほとんどが地下水です。地下水は貴重な水源ですが、すべてが容易に利用できるわけではなく、深い場所にあるものも多いです。
- 河川や湖沼
私たちが生活で利用している河川や湖沼の水は、淡水全体のわずかな割合にすぎません。地球全体の水の総量でみると、約0.01%程度です。
このように、地球は「水の惑星」と呼ばれますが、人間が容易に利用できる淡水資源は極めて少ないのが現状です。
世界の水不足事情
2024年に発表された最新の研究(米・Science誌)によると、低・中所得国を中心に44億人以上が家庭で安全な飲料水を利用できていません。これは、2021年時点のWHO/UNICEF推計(約20億人)を大幅に上回る数値であり、測定方法の改善により、これまで過小評価されてきた実態が明らかになったといえます。
特にサブサハラ・アフリカ、中東、南アジアでは、人口増加や経済発展に対して水資源が不足しており、上下水道などのインフラ整備も遅れています。中東は2040年までに世界で最も水ストレスが深刻な地域になると予測されています。
水不足の主な原因
- 人口増加と経済発展
世界人口は2050年に約97億人へ増加すると予測され、水需要は生活用水・農業用水・工業用水すべてで拡大します。特に新興国では生活水準の向上や産業化により水消費が急増しています。
- 気候変動の影響
干ばつや洪水などの異常気象の頻発、降水パターンの変化、氷河融解による水源の減少など、地球温暖化は水資源の安定供給に深刻な影響を与えています。
- 水質汚染
工業排水や農薬、下水処理の不備による淡水の汚染が進み、浄化には高いコストと技術が必要です。特に途上国では深刻な課題となっています。
- 農業用水の大量消費
世界の水使用量の約70%は農業が占めていますが、非効率な灌漑方法により多くの水が失われています。食料需要の増加に伴い、さらなる水使用増が見込まれます。
なぜ水ビジネスが投資テーマとして注目されるのか
- 確実な需要の存在
農業、産業、都市生活のいずれも水を必要とし、需要は予測可能で長期的に安定しています。
- 投資ギャップの大きさ
2030年までに安全な水・衛生の普及には年間1,140億ドル以上の追加投資が必要とされていますが、現状は大きく不足しています。
- 企業経営への影響
水不足は企業のサプライチェーンや生産活動に直結するリスクとなり、世界的企業も水リスク対策に注力しています。
- 新市場の成長
海水淡水化技術や水再利用システムなどの分野は急成長しており、2027年には世界市場が200億ドル規模に達するとの予測もあります。
解決できる社会課題
水ビジネスは、以下のような社会課題の解決に貢献します。
- 水不足の解消
淡水化技術や水の再利用技術によって、利用可能な水資源を増やし、水不足に苦しむ地域を支援します。
- 衛生環境の改善
上下水道の整備や浄水技術の提供を通じて、感染症のリスクを減らし、公衆衛生を向上させます。
- 環境保全
産業排水の浄化や水質汚染の監視により、河川や海洋の生態系を守ります。
テーマの恩恵
- 投資家
水ビジネス関連企業の成長を通じて、株価の上昇や配当金といった形でリターンを得る可能性があります。
- 関連企業
上下水道事業を運営する企業、水処理プラントを建設する企業、浄水器を製造する企業などが、需要の拡大によって収益を伸ばします。
- 社会全体
安全な水の安定供給が実現することで、人々の生活の質が向上し、経済活動が活性化します。
市場規模と今後の見込み
世界の広義の水ビジネス(供給、処理、流通を含む)市場は、2023年時点で約8,800億ドルと推定されており、今後もインフラ整備や新興国の需要増に伴い着実な拡大が見込まれています(2031年には約1.25兆ドル規模 /年間CAGRは約4.4%) 。
また、特に水・廃水処理分野に限定すると、この市場は2023年に約3,233億ドル、2032年には約6,178億ドルに成長する見通しで、CAGRは約7.5%と予測されています 。
総じて、5〜6%という成長率予測は処理分野に近い範囲ではありますが、全体市場としてはやや高めの想定といえます。
関連株を考える際のポイント
最新の一覧は株探にあります。
水ビジネスに関連する銘柄は多岐にわたりますが、投資を検討する際は以下のポイントを押さえましょう。
- 技術力
淡水化、浄水、水の再利用など、独自の優れた技術を持つ企業は、競争優位性を持つ可能性があります。
- 事業の安定性
上下水道の運営など、インフラに関連する事業は、景気変動の影響を受けにくく、安定的な収益が見込めます。
- グローバル展開
世界的な水不足の課題に対応するため、海外市場で事業を展開している企業は、より大きな成長機会を持っています。
まとめ
水ビジネスは、人類にとって不可欠な「水」という資源を扱い、社会課題の解決にも貢献する、非常に重要なテーマです。投資を検討する際は、事業内容や技術力、グローバルな展開力などを分析し、成長が期待できる企業を見つけ出すことが成功の鍵となります。
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投資実績について
確定利益である配当・分配金も2024年はおかげさまで709万円となり
2024年末の資産増(前年対比):+1,386万円(+48%)となりました。
\毎月の投資収益(2024年)/
\総資産(2024年末)/

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